交際

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「帰るぞ!」 靴に履き替えた拓哉が、すっと心結の前に姿を現した。 心結は観念したように靴に履き替えると、草壁君の後ろをとぼとぼと歩いた。 心結にはこの光景がなんだか不思議に思えた。 彼氏かぁ。 心結は拓哉の背中をちらっと見た。 あーあ、これが大崎先輩ならよかったのになーーー。 心結は少しがっかりしながら拓哉の背中を見つめた。 「ほらっ、シャキッと歩こうぜ」 校門に来たとき、前を歩いていた拓哉が突然後ろを振り返った。 「う、うん」 心結は小さい声で答えた。 すると拓哉が少しはにかみながら言った。 「これからは毎日一緒に帰るからな」 「う、うん」 毎日かぁ~、けど仕方ないよね。 肯定したものの、心結の気持ちは揺れていた。 「なんだよ、ちっとも嬉しそうじゃないな。いいか、こうやって帰りながら恋愛に関して教えてもらえるんだぞ。凄くありがたいことだと思わないのか?」 「それはそうだけど・・・」 すると拓哉の足が急に止まった。 「なんだよそれ?そんないい加減な気持ちでいいのか」 拓哉がジロリと鋭い視線を心結に向けた。 うわぁぁぁ~~~~~! 拓哉の目つきが怖くて、心結はかばんで顔を隠した。 すると、拓哉はため息を吐きながら心結のかばんを奪い取ると、 「おまえ本気でやる気あるのか?」 と言いながら、心結に顔を近づけた。
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