交際

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「じゃあ行こうか」 拓哉が笑いながら心結の前に手を差し出した。 拓哉の手の上に、嫌々手をのせる心結。 気持ちはどん底まで落ち込んでいた。 確かに小説のためかもしれないけど、本当に手を繋ぐ必要なんてあるの? 心結はまだ迷っていた。 「こんなところ誰かに見られたらどうするの?また変な噂が流れちゃうよ」 「いいんじゃない?すでに俺たち大勢から見られてるみたいだしさ」 はっとして心結は辺りをきょろきょろと見回した。 夕方の歩道には、帰宅途中の小学生が数人歩いているだけで、心結と同じ制服の生徒は一人もいなかった。 心結はほっと胸を撫で下ろすと、拓哉を睨みつけた。 草壁君の理不尽な態度をこれ以上許しておけないわ。 認めちゃえば、要求はどんどんエスカレートするに決まってるもん。 心結は急に立ち止まり、拓哉に向かって言った。 「こんなことするなら、もう草壁君とは一緒に帰らない!小説にも協力してくれなくていいから!」 心結は毅然とした態度で拓哉を見つめていた。 すると─── 「おっと、また反抗か?」 拓哉はそう言うと、繋がった心結の手をグイッと引き寄せ、心結の頭を自分の胸に押し付けた。
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