10年前

2/3
前へ
/57ページ
次へ
「うぅ……うわぁーん!」 幼い女児が泣き出した。それを取り囲むように数人の男児。 「やーい、泣き虫千鶴ー!」 泣きじゃくる千鶴に、男児たちは罵声を浴びせる。 『……コラァ! アンタら何してんのよ!』 「う……うぅ……のんちゃん」 のんちゃんと呼ばれる女児の名前は、斎藤迦音(さいとうかのん) 迦音の放つ威圧感に男児たちは後ずさり、散り散りに逃げていった。 『待てェ!』 それを逃がすまいと、走って追い掛ける。 数分後──。 「のんちゃん、大丈夫!?」 『平気。ちーたんはケガしてない?』 「アタシは大丈夫だけど……」 千鶴の視線の先に、所々傷や泥の汚れなどが目立つ迦音の姿が。 『ちーたんがケガしてなきゃそれでいいや……ちーたんは私が守るからね』 ニコッと笑うと、それにつられて千鶴も涙を拭い、笑ってみせた。 2人で仲良く歩いて帰る。 _
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加