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10年後の秋──……。
迦音は今年で16歳で、現在高校1年だ。
路地の片隅で、近所の住民たちがヒソヒソと他愛もない世間話をしている。
『……』
(また私のことを話しているのかな……)
迦音は勝手にそう思い込んでいた。
次第に表情が歪んでいき、息が上がるのを感じるが、迦音はそれを抑える事が出来ない。
「あっ、のんちゃん。おはよー」
すると、前から誰かが話し掛けてきた。
幼なじみの『藤田千鶴』だ。
千鶴が視界に入り、迦音の目付きが鋭くなる。
『……うるさい。全部お前のせいだ! 気安く話し掛けんな!』
迦音は辺りに聞こえる程、声を張り上げて怒鳴った。
当然千鶴は驚き、言葉を失う。
『それと……のんちゃんって呼ぶの辞めろよ。高校生にもなってみっともないんだよ!』
「……ごめん」
千鶴は瞳に涙を浮かべ、走り去ってしまった。
『……』
辺りを見ると、近所の住民たちが迦音の方を見ながらヒソヒソ話をしている。
『……』
それを無視して学校に向かった。
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