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『ちぃ……ちぃは何も悪くない……なのになんで……ちぃに当たっちゃうんだろう……』
天井に向かって呟いた。
しばらく天井を見つめていると、どこからか声が聞こえてくる。
「に……にゃあ」
『……ッ!?』
声に気付き、迦音は勢いよく身を起こした。
迦音の視線の先に、見たこともない猫がいた。
紅の色をした瞳……長くサラサラの水色がかった白い体毛……そして黒い体毛に覆われた尻尾……なんとも神々しい猫が、迦音の部屋に入り込んでいた。
『君、猫……だよね?』
「う……にゃあ……にゃあ」
なんともおぼつかない鳴き方だ。
『それにしても珍しい毛の色だね。どこから来たのかな?』
手を伸ばし、猫の頭に手を乗せる。
「にゃ……僕は黒蘇(クロス)。妖界から来た妖怪だ。迷惑は掛けないから、しばらくここに置いてほしい……にゃあ」
『……ん? 今……言葉を……』
迦音は耳を疑った。黒蘇と名乗る神々しい猫が、流暢な言葉で迦音に話し掛けてきたからだ。
「……ダメかな?」
『帰れ。そして夢から覚めろ……私ッ!』
迦音は目をつむり、自分の手で自らの頭をポカポカと軽く殴ってみる。
しかし痛みがあった。
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