10年後

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『ちぃ……ちぃは何も悪くない……なのになんで……ちぃに当たっちゃうんだろう……』 天井に向かって呟いた。 しばらく天井を見つめていると、どこからか声が聞こえてくる。 「に……にゃあ」 『……ッ!?』 声に気付き、迦音は勢いよく身を起こした。 迦音の視線の先に、見たこともない猫がいた。 紅の色をした瞳……長くサラサラの水色がかった白い体毛……そして黒い体毛に覆われた尻尾……なんとも神々しい猫が、迦音の部屋に入り込んでいた。 『君、猫……だよね?』 「う……にゃあ……にゃあ」 なんともおぼつかない鳴き方だ。 『それにしても珍しい毛の色だね。どこから来たのかな?』 手を伸ばし、猫の頭に手を乗せる。 「にゃ……僕は黒蘇(クロス)。妖界から来た妖怪だ。迷惑は掛けないから、しばらくここに置いてほしい……にゃあ」 『……ん? 今……言葉を……』 迦音は耳を疑った。黒蘇と名乗る神々しい猫が、流暢な言葉で迦音に話し掛けてきたからだ。 「……ダメかな?」 『帰れ。そして夢から覚めろ……私ッ!』 迦音は目をつむり、自分の手で自らの頭をポカポカと軽く殴ってみる。 しかし痛みがあった。 _
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