エピソ-ド2

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いらっしゃい お、ボウズ、あんまりウチのお菓子が美味かったから今度はかぁちゃんを連れて来てくれたのかい? ありがとうよ え?なんです奥さん? このボウズがお金を払いましたかって? ちゃんと貰いましたよ お金なんかあげなかった? しかし奥さん ウチの店はこの小さなお客様から間違いなく料金を支払って頂いてますよ なぁボウズ? 貰った俺が言ってるんだから間違いねぇよな こらこら 泣く奴があるか 奥さん、息子さんに謝った方がいい こんな明るく満ち足りた夜に 奥さんは息子さんの心を一人ぼっちにしちまった 何ですって? 小さな女の子に貰ったって嘘をついた? 奥さんなんて事を言うんだね それは本当の事ですよ 貰ったのはこの子だけじゃないんでさ ウチの店は安くて美味い菓子を売る店でね 色んな子供がやって来る 今日は古くて色褪せ、薄汚れたような服を着て、埃や垢にまみれた子が多かったですわ そんで『こんな美味しい物初めて食べた』って言いながら夢中になって食べている あの子供達はこんな安い菓子すら食べられない家庭の子なんですな あの子がくれたとかあの子のおかげとか話しててね つまりそういう事だったんですな 子供達の中には自分だって食べたいだろうに一口もかじらず『お母さんに食べさせてあげるんだ』『僕もあの子みたいにお母さんにあげるんだ』って目をきらきらさせながら走って行った子もいます 奥さん あなたは本当に謝った方がいい この子は息を切らせていませんでしたか? ありつけない筈のご馳走に一口でもかじったりちぎった跡がありましたか? あなたのお子さんなんですよ 自分は一口も食べずに『お母さんにあげるんだ』と言って、目をきらきらさせながら走って行ったのは さあさあ 二人とも涙を拭いて 夜が再び明るく満ち足りたのなら ウチの美味いお菓子でお二人の夜に彩りを添えさせて下さい 何、お代はいりません 俺も、あなたのよく出来た息子さんのように 今日は来た人みんなにあげる事にしているんです
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