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何? 平和? 戦士は平和な世界の為に戦うのだと? では貴殿の言う平和とは一体何か? 争いの無い世界? 誰も傷付く事の無い世界? 一体何処にそんな世界が? これから作る? その為に俺の力が必要だと? … 貴殿は革命軍の将軍でありながら、俺の腕を見込んでわざわざ足を運んでくれた それは嬉しく思う だが 俺は幻想の奴隷になる程青くは無い まぁ聴くがよい 例えば この身体を構成しているのはこれまでに食べて来た多くの食物だ 貴殿は考えた事があるか? これまでに食べて来た食物の量と これから頂く食物の量 その食物がどれ程の命から作られて来るのか 世俗も同じよ 何処かの繁栄は何処かの衰退を顕す 誰も争わず傷付かない世界が実現するとしたなら それは世界が破滅を迎えた時ではないかと俺は思うな 何? では平和を志す事に意味は無いのかだと? 貴殿は考え方が極端であるな もっと肩の力を抜くとよい 完全な平和は有り得ない だからと言って それなら平和を志す事に意味は無い と言う事にはなるまい それでは 死は誰にでも訪れるのだから 生きている事に意味は無いと言っているのと同じだ 何? 俺が戦う理由? 金でもなく 名声でもなく 平和でもないのなら 俺は一体何を求めているのかと そういう意味か? ふむ、では答えよう 俺は何も求めてはいない 俺が戦うのは戦士だからだ 僧侶であったなら人々に教えを説くし 肉屋であったなら包丁を振るう そうして日々の義務に最善を尽くす その手段と目的の一致する深淵微細な中心円が命を注ぐに値する、福徳の大洋 先の例え 死は誰にでも訪れる ならば問題は 今この瞬間をどう生きるか この一点だけだ これを蔑ろにしてまで求めるものなど何処にもあるまいよ そろそろ貴殿にも分かって来たであろう つまり 俺を釣る餌は無い と、言う事だ 俺は独り歩む者 縁起の法輪が転ずるままに 一切をあるがままの無常に委ね 無為の最善を尽くす生き物 それが 今この瞬間に存在する 俺と呼ばれる心と身体と魂の全てよ
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