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青く澄んだ空の下、土の上を車輪が軋み、蹄が並脚の響きを刻む
原野を行く一つの馬車があった
幌の中には小さな娘とその両親
無垢な瞳に無邪気さを湛えて娘が尋ねる
『ぱぱ、おばあちゃんのまちまであとどのくらいなの?』
『家からちょうど半分来たから、家からここまでとちょうど同じ距離だよ』
『ふ~ん』
幼い娘はわかったようなわからないような表情で返事をする
『大事が無ければよいのですけど』
少し心配そうに妻が夫に声をかける
『そうだな両方の町から最も離れたこの場所が最も賊に狙われやすい、しかしその為にちゃんと用心棒を雇ってある』
『確かにそれもあるのですけど、私はお祖母様の容態が心配で』
『確かに…大事に至らなければよいが』
祖母も
この旅も
そう夫は胸の内で呟いた
革命軍とやらが王都に反旗を翻してから軍費増強の為に税が重くなるにつれて治安も乱れ、あぶれ者や盗賊が頻繁に出没するようになった
最近の奴らは取れるものは何でも取って行く
金から馬から食料から命まで
女は見た目が良ければ即座に売り飛ばされる
昔のは賊にはそんな知恵も人脈も無かった
背後で入れ知恵をし、自らの手を汚す事無く、甘い汁を吸っている者がいるとこの夫は密かに考えている
何が革命軍だ
事あるごとに平和を唱えながら、あっという間に平和を壊して行きやがる
たかが隣町に行くにも用心棒を雇わなければならない程に、だ
そこまで考えた矢先に夫は
いつの間にか並脚の響きが止んでいる事に気が付いた
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