序章 学校は二学期が一番忙しい

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聖ゴスペル魔術学院は、『魔王戦争』により甚大な被害を得た。 しかし、それも二学期が始業する前には元通りに修繕され、二学期はいつも通りに始まることになったのだ。 生徒会室にて。 そこには、神妙な顔をした加藤康成(かとうやすなり)がいた。 なぜ、彼がそんな顔をしているのかというと、彼の目の前にいる男――水瀬凪瑳(みなせなぎさ)のこの一言が原因だった。 「俺、学校辞める」 「…………は?」 いきなりの退学宣言。それが加藤を困惑させた。意味がわからない。 「な、なにいきなり、訳のわからんことを言うんだ? 大体、三年のこの時期に退学するって、普通じゃ考えられねぇよ」 「でもな、加藤。俺は、もう人間じゃなくなったんだよ。それを考えると俺がここにいるのっておかしくね?」 「うーん……そう言われるとわからなくもない、けど……辞める事ないんじゃね?」 「肉体が死に、神体として生まれた俺がこの学院の生徒会長として君臨するのは、どうも気が引ける。だってそうだろ。俺、神様になったんだから。要は、今の俺の地位って学長以上なんだよね」 「確かに……」 水瀬凪瑳。 彼は、ギリシア神話の英雄・ヘラクレスの生命力を持っている。そのため、彼はヘラクレスと同じ特性を持ち合わせているのだ。 そして、対『黄金のバラ』魔術戦争にて彼の肉体は死んだ。しかし、ヘラクレスの特性が適用され、その神性が天へ昇り、彼は神の座についた。 その後、ギリシア神話の神々の特性が適用されたが故に、凪瑳は今ここにいるわけだ。 要するに、 水瀬凪瑳は人間を辞め、神様という高次的な存在なのだ。 だから、魔術師を養成する聖ゴスペル魔術学院に在学する理由がなくなった。だって、神様となった凪瑳はもうなにも養成されるような事はないのだから。 「それに、学長から辞めてくれ、って言われたよ」 「じゃあ……」 「そうこれは学院の意向なのさ」 「わかった。それならしょうがない。でも、お前これからどうすんだ?」 「まあ、こんな体になった以上暮らして行くには苦労はしないし、家の跡を継ぐっていう道もある。でも……、暇なんだよな」 「だから?」 「だからさ、俺はこれからこの学院の『備品』としてここに残るよ」 「……は? 教師の間違いじゃなくて?」 「教師はいやだよ。めんどくさい」 「備品より教師の方が良いと思うけど……」 「人より物の方が動きやすいじゃん」
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