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教室で2人きり。
やっぱり気まずい。
だって、只野くんは何を考えているのか解らないから。
只野くんはあたしに背を向けて歩き出した。
あっ、帰っちゃう。
そう思ったらつい、
「その本、読み終わったら貸してくれない?」
只野くんはピタッと歩くのを止めた。
ゆっくり振り返ると、
「なんで?」
と、聞いた。
『なんで?』
なんでだろう?
あたしも知りたい。
なんであたしは只野くんを呼び止めたのだろう?
だいたい、あたし本なんて読まないし…。
「嫌なら、いいよ」
あたしはなんだかちょっと膨れて急いで鞄を手にした。
その時、
「好きなの?」
えっ!?
顔を上げるといつの間にか只野くんが傍にいた。
長い前髪に隠された瞳はちょっと薄茶色でその瞳が真っ直ぐあたしを見ていたから心臓が尋常じゃないくらい早かった。
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