井の中の蛙、大海どころか湖も知らず

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春というには少し暖かく、しかしまだ長袖は手放せないこの時期、休日で人が賑わう街に来ていた。 冬の名残か厚手の上着を羽織っている人、薄手でコンビニ袋をぶら下げている人、時計を気にしている着飾った人、それぞれが目的の為に外へ出ている。 そんな中目的もなく街をふらついていると、良さげな店が目に入った。 「セカンドハンド」と書かれたアンティーク調の古着屋は、この街のように雑然としている。 古着屋というよりは雑貨屋と言う感じか、洒落てるランプが店内を暖色で包み込み、とはいえ気負うほど凝りすぎた店内でもない。 まあ、いいものがあれば目星をつけとこうといった軽い気持ちで入ったのが間違いだった。 「いらっしゃいませー」 若い女店員の軽快な声と共にぐるりと見回すと、面白そうなものも多々あり早速物色することにした。 衣類はもちろんアクセサリー、靴、小物雑貨、本、家具、何故か海外の食品も数少ないが並んでいる。 そのどれもが洒落ていて、このお店の雰囲気と合っていた。 おおまかに見た頃、棚に並んでいた伊達眼鏡に目がいく。 (そういえば今の眼鏡、ネジはゆるんでるし、傷だらけだったな……) 別になんてことない黒縁眼鏡を手にとり、値段を確認する。 値段もリーズナブル、シンプルなデザインだし、学校に着けて行ってもなんら問題ないだろう。 橘 琉珂(たちばな るか)は普段通りに眼鏡を購入し、店を出た。 いい買い物が出来たと気分も良かった。
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