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自室へ帰り、気だるいながらも勉強道具をテーブルに散らばせる。
流珂の学校での立ち位置は「そこそこ勉強できるやつ」だ。
がり勉ってほどでもなく遊び呆けてるわけでもなく、平均より少し上を維持している。
もちろん言葉通り「維持」しているのだ。
クラスの平均点を先読みし、尚且つそれより少しばかり上を狙い突飛にはみ出たりしないよう気をつけている。
全力で勉強に力を注いだら、それこそ学年で1位をとれる自信はあった。
だが何故そうしないのかと問われれば理由は簡単だ。
全力を注ぐほど勉強にも自分の将来にも関心がないというのも1つの理由だが、琉珂はとにかく目立つのが嫌いなのだ。
テストの点は平均くらいでもいいと思っているが、知識はしっかりと頭に詰め込んでおきたいからそれなりの勉強はしている。
無知なことこそ恥ずかしいものはないと考えているし、無知な故命を落とすなど愚鈍だとすら思う。
毒りんごを食べてしまったシンデレラなんか、なんて愚かなんだろうと笑ってしまう。
それを純粋だなんだと好む人間性を琉珂は持ち合わせていなかった。
10分ほど日本史の教科書をぺらぺらめくり、そして閉じる。
今日の勉強はこれで終わりだ。教科書さえ暗記してしまえばテストの点はそれなりに取れる。
のどが渇いた流珂はお茶を取りにキッチンまで行くと、兄がお茶をがぶ飲みしていた。
兄の髪は寝癖がついてるし、服もラフなスウェットだった。
「……兄さん、おはよう」
「うるせえ。しゃべんな」
兄の顔は見るからに不機嫌で、こちらを見向きもしない。
挨拶しなかったらしないで怒るくせに、理不尽すぎる。
機械的な挨拶だけすませ、そそくさとミネラルウォーターをとり自室へ戻った。
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