井の中の蛙、大海どころか湖も知らず

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兄との関係は冷え切っていた。 兄、空雅(くうが)は流珂より1つ上の高校3年だ。 学校は別々のところに行っているから、琉珂のクラスメートは兄の存在をほとんど知らない。 というよりは兄のことを友達に知られたくはなかった。 空雅は琉珂と正反対で、ガラは悪いし他人に迷惑ばかりかけている。 髪はド派手な銀髪で、ツンツンとナイフのように鋭く立てている。 拳はすり減り、生傷がいつも耐えない体は今で言う細マッチョだ。 そんな見た目からして不良な空雅はこの地域で1、2を争う暴走族「愚狼連合」の副総長の座についていた。 そのためか挨拶や上下関係に敏感で、チャラチャラしてるやつを見るとすぐに暴力を振るう。 そのくせ仲間がやられていたら何も考えずに敵に突っ込んでいく。 感情の起伏が激しいのに、仲間には慕われていた。 それでも小さい頃は琉珂とも仲が良かった。 昔から腕っぷしには自信があり頼りになるお兄ちゃんで、流珂もそんなお兄ちゃんが大好きだった。 悪いやつから守ってくれる憧れのヒーローだった。 なのにいつからだろう、こんなに仲が悪くなったのは。
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