井の中の蛙、大海どころか湖も知らず

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翌朝、琉珂は外出前に玄関の鏡で日課の身だしなみチェックをしていた。 人間というのは見た目の印象でその人の大まかなイメージができてしまう。 そのイメージは一度ついてしまうと払拭するのは意外と難しい。 だらしのない人間には見られたくないし、何より年頃の男だ。 他人の視線だって気にはなっている。 琉珂は昨日買った黒縁眼鏡を軽く拭いかけてみた。 今までかけていた眼鏡も黒縁だったから、そんなに違和感はない。 どうせ新しいものを買うんだったらデザインや色を冒険しても良かったのだが、やはり黒縁に落ち着いてしまった。 ただ少し新しい眼鏡の方がどこか落ち着いた冷たい雰囲気がする。 感情よりも理性に従い、人情よりも利益を好む自分に合っている気がする。 行ってきます、と家から出た時ふいに目の端に何か影のようなものが映った。 「………?」 周りを見渡しても見慣れた住宅街。 まだ時間も早いからか、動くような人や車は見当たらない。 ただの気のせいだったようで、琉珂は眼鏡を指で押し上げ学校に向かうことにした。 「橘っはよー!」 「ん~~…おはよう~」 教室に入ると真っ先に声をかけてきたのは、友人の明智陸人(あけち りくと)だ。 明智は色黒、坊主と典型的な野球部員だった。 それにパワフルで何にでも首を突っ込みたがる性格だからかなり目立つ。 それと明智の腰巾着のようにいつも一緒にいる宮沢昴(みやざわ すばる)が眠そうに立っていた。
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