16痛目 剣を求めて

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「心臓を貫かれても生きてるなんて、さすが死の女神の契約者ね」 どうしてそのことを……! 「勇者は二人もいらないわ。特に私の管理下にないなら尚更ね」 彼女はそういうと俺の胸から剣を引き抜く。 俺はまるで糸の切れた操り人形の如く地に伏した。 「ちなみに助けは来ないわ。その槍にはヘルイヤを近付けなくする意味があるの。抜かないでくれて助かったわ」 リエラの歪んだ笑みを見ながら、俺は息絶えた。 「お兄ちゃん……お兄ちゃん……」 クロエが必死に俺の身体を揺さぶるが、俺はもう動かない。 その光景が過去の出来事と合わさる。 「…にい……さま……」 「私のことを知ってしまった貴女にも死んでもらうわ。冥界で兄妹仲良く暮らしなさいね」 リエラは無慈悲に剣と化した右腕をクロエに振り下ろす。 「アアア……ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」 クロエの割れんばかりの絶叫、その瞬間クロエを中心に魔力の暴風が吹き荒れる。 「……!」 「…………」 まるで感情が欠落したかのように無表情のクロエの右手には細身の長剣と左手には太い短剣が握られていた。 長剣は剣先に行くにつれて赤から青に、短剣は青から赤になっている。 危険を感じたのか人型のネセサリウスはクロエに再び襲いかかった。 「オーバーアクセル」 クロエがそう呟くと、クロエの姿がまるで消えたかのように高速で動く。 刹那、ネセサリウスは160分割されてただの液体に戻った。 「時属性……珍しい属性ね」 クロエは感情の抜け落ちた目でリエラを見る。 「もう壊れた心じゃ怒りすら感じてないんじゃないかしら?」 「………」 クロエは壊れた心でリエラに襲い掛かる。 ただ殺す。 そのために……… クロエは長剣でリエラを刺す。 リエラは薄ら笑いを浮かべたまま少し身体をズラして肩に当てるようにする。 「何してるんだ!!」 騒ぎを聞きつけて戻ってきたルークがクロエをアクアボールで弾き飛ばした。 「ルーク!先輩が……私達を庇って……」 ルークは黒い液体と血だまりで息絶えている俺を見た。 ナーシャが俺に近付いて脈を計る。 「……嘘……ジェノン様にはお母さんがついていたはずなのですぅ!……どうして……キャッ!クロエちゃん!?」 今度は俺の死体を触るナーシャにも剣振るって離れさせた。
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