狭間のもの

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目覚めた時は、辺り一面、未だ暗く夜の中だった。 男はゆるりと上半身を起こした。 普段、夜中に目覚める時は、尿意が有る時が多い。 しかし今は、尿意は微塵も感じられない。 ――何で目が覚めたんだ? 目が覚めた理由は、何故だか判らない。 何故だか判らないが、とにかく異様な胸騒ぎがする。 これまでの長い人生において何か胸騒ぎを覚えたことは、極端に珍しいことでもない。 しかし今経験しているこの胸の落ち着きのなさは、これまでに経験したことのない程に、激しいものだった。 頭痛までしている。 けっこうきつい。 おまけに指の先が、微かに痺れている。
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