46人が本棚に入れています
本棚に追加
するとその暗闇の中から何かがゆっくりと、実にゆっくりと出てきた。
二人の少女よりも遥かに大きく、下の部分に歪にゆがんだ太く短い二本の足のような物が生えていて、異様にぶよぶよとした醜いもの。
そのぶよぶよの中の下の方に、バレーボールくらいの大きさで瞳がなく、全体に鈍く乳白色に光る目と思われるものが二つ並び、その上に右上から左下に向けてまるで鋭利な刃物で切り裂いた様な、斜めに走る口と思われる裂け目が有った。
そして中央付近に、角としか表現しようのない大きなものが、天に向かって突き出していた。
短い足と上下が逆さまになった巨大な顔だけの存在。
それがケムンに語りかけてきた。
“おいおい、まだ呼んでもいないのに、のこのこやって来たやつがいるのか?”
その声はケムンの頭の中に直接響いて来た。
“うん、そうだね”
“うん、そうだね”
左右の少女が答える。
これも頭の中にストレートに響いて来る。
再び“顔”が言った。
“意識が同調しやすい、単純な人間のようだな”
少女が同じくステレオで答えた。
“で、どうするの?”
“で、どうするの?”
男とも女とも――少なくともどう見ても人間でも動物でもない――子供とも老人ともつかないぶくぶくしたものが言った。
最初のコメントを投稿しよう!