狭間のもの

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“無理やり喰ってもいいが、念の為に意識を捕まえておくか” いきなりケムンの頭の中に何かが入ってきた。 普通に暮らし一生を終える人間は、頭の中に直接何かが入ってくると言う経験を持たないままに死を迎える。 ケムンもそうなるはずだったのだが、そうはならなかった。 頭の中、白い脳みその中に、透明で実体が有る様な無い様な、それでいて長い爪が伸びている事がはっきりと判る二本の手の様な物が、無造作にケムンの頭を、脳みそを、そして意識を引っ掻き回している。 そんな感覚だった。 気分が悪い。 胸の鼓動もはっきりと判るほどに、上がっている。 と同時に、無意識のうちに少女の手を振り払おうと力を込めていたケムンの両腕から、すっと力が抜けた。 それを確認した少女が、掴んでいた手を離した。 ケムンの身体がゆっくり、しかしまっすぐに、顔に、皮膚のないむき出しの顔に向かって勝手に歩き出す。 止まりたい意識は十分に有るのだが、頭を少し後方に倒した状態で、足だけが自分の足では無い様にケムンの意思を無視して、進んでいく。 「こいつらいったい、何なんだ?」
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