46人が本棚に入れています
本棚に追加
思わず口にすると、意外にも質問の答えが返ってきた。
頭の中で自由に暴れる手から、何かが伝わってきた。
ある風景。
まるでその場にいるかの様に、一つの風景がはっきと見えた。
重い灰色の空の下に、焼け焦げた様な黒と茶色の砂と岩で埋め尽くされた大地が、右も左も前も終わりが見えない程に広がっている。
そこに何かが居た。
一番近くにいる人間……の、ような物。
地面に転がっているその身体には、頭がない。
そのかわり、胴体ほどの太さと大きさを持った右手の巨大な掌の中に、目と鼻と口がある。
苦しいのか呻き声の様なものを上げ、口から何かねばねばした黄色い物が滴り落ちている。
その右側には目と口。
大きな目と口だけが、岩の表面に張り付いていた。
そいつはケムンを見ていた。
その存在が判るのだ。
不気味に薄く笑っている。
左にはのっぺらぼう。
人形のようにじっと立っている。
裸のそいつには、目も鼻も口も耳も髪の毛も無い。
男と見られるその身体の股間にも、あるべきものが何も無い。
首だけがやけに長く、カタツムリの触覚のように頭が前方に突き出ている。
遠くにも何か動くものが五つ、六つあるが、暗くてよくは判らない。
最初のコメントを投稿しよう!