狭間のもの

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思わず口にすると、意外にも質問の答えが返ってきた。 頭の中で自由に暴れる手から、何かが伝わってきた。 ある風景。 まるでその場にいるかの様に、一つの風景がはっきと見えた。 重い灰色の空の下に、焼け焦げた様な黒と茶色の砂と岩で埋め尽くされた大地が、右も左も前も終わりが見えない程に広がっている。 そこに何かが居た。 一番近くにいる人間……の、ような物。 地面に転がっているその身体には、頭がない。 そのかわり、胴体ほどの太さと大きさを持った右手の巨大な掌の中に、目と鼻と口がある。 苦しいのか呻き声の様なものを上げ、口から何かねばねばした黄色い物が滴り落ちている。 その右側には目と口。 大きな目と口だけが、岩の表面に張り付いていた。 そいつはケムンを見ていた。 その存在が判るのだ。 不気味に薄く笑っている。 左にはのっぺらぼう。 人形のようにじっと立っている。 裸のそいつには、目も鼻も口も耳も髪の毛も無い。 男と見られるその身体の股間にも、あるべきものが何も無い。 首だけがやけに長く、カタツムリの触覚のように頭が前方に突き出ている。 遠くにも何か動くものが五つ、六つあるが、暗くてよくは判らない。
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