狭間のもの

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風景が少し変わった。 狭間の世界に居るのは、舞台に立つあいつ。 その上の空間に、いきなり黒い穴が出現した。 吸い込まれるように穴に入っていく“顔” 暗く長いトンネルを激しく移動して、辿り着いた先にあったのが、このホテル・シャングリラ。 その後その穴は閉じ、再び開くことはなかった。 普段は存在しないこの世と狭間の世界とをつなぐ道が、何かのはずみで出来上がり、こいつを現世に運んだ後、消えた。 その事がケムンには、自分が経験した事のようにはっきりと判った。 異界の物が言った。 “『門』が開くことがごくまれにあるとは知っていたが、まさか自分がそれに巻き込まれるとは、思ってもみなかったぞ” 気がつけば、ケムンの足は顔の近くで止まっていた。 見える景色もホテルの宴会場に戻っておる。 ――これから俺は一体どうなるんだ? ふと頭をよぎった疑問に、律儀にも答えが返ってきた。
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