46人が本棚に入れています
本棚に追加
/58ページ
信じられ無い事に、角の周りを焦がすだけと思われていた火は、あっと言う間に巨大な炎と化した。
ケムンは自分の眼を疑った。
たった一本のウオッカが、これ程までの効果をあげるとは。
それはまるで、ガソリンを十分に含んだ襤褸切れか紙でもあるかの様に、あかあかと燃えているのだ。
頭の中では無くケムンの耳に直接、何かが聞こえて来た。
「くそっ、なんて事を、なんて事を……熱い……火には……弱いのに……」
日本語だった。
斜めに走る大きな裂け目が、日本語をしゃべっているのだ。
ぶよぶよした巨大なものが床に倒れ、その上をごろりごろりと回り始めた。
火を消そうとしているのだろう。
しかし炎の勢いは一向に治まらない。
それどころか最初からあった激しさが、更に増していく様にも見える。
人間とも動物とも違う、今まで一度も聞いた事の無い様なかん高い絶叫が、辺り一面に響きわたる。
狭間のものは、両手をぶん回し、床を転がり、悶え苦しんでいる。
不意に片方の手がぼとりと落ちた。
その次には、もう片方の手も。
落ちた二本の手は、燃えながらあっという間に元の全裸の少女の姿へと、戻っていった。
二人ともたちあがり、ふらふらとさ迷っている。
最初のコメントを投稿しよう!