狭間のもの

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火の勢いは更に増し、気が付けば二人の少女の身体が、どんどんと小さくなっていく。 そして普通の八歳位の大きさになったと思った時、二人同時に表面ではなく身体の中から、まるで火炎放射器のように幾つもの炎を噴き上げると、あっと言う間にその身体が縮み、ほとんど見えなくなった。 後は床が、ちろちろ燃えているばかりである。 本体の方も熟した果実が萎びていくかの様に、小さくなってゆく。 そしてケムンよりも小さくなったと思えた時、突然がばと足だけで立ち上がり、悶え苦しみながら舞台の奥へと、ふらふら歩き始めた。 奥には天井から分厚い暗幕が吊り下げられていたが、そこにぶち当たり、再び倒れた。 もう子犬ほどの大きさしかない。 それも見る見る縮んでいき、とうとう何も見えなくなった。 そこには小さな火が、未練がましく燃えているばかりとなった。 しかし暗幕に移った火はそうではなかった。 火は暗幕を喰い散らかしながら成長し、次々とその勢力を広げてゆく。 ケムンは慌てて宴会場を飛び出した。        ・ そのまま正面玄関へ行き、扉を開けようとした。 が、それは開かなかった。 鍵が四箇所もかかっている。 さっき確かに開いたばかりだというのに。
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