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警察は犯人が――たまたま――開いていたトイレの窓から侵入し、中で火を放ち、再び出て行ったと見ている。
得体の知れない死体及び、何かよく判らない物の焼け残りなどが見つかった、という話も流れてこなかった。
おそらく燃えやすい狭間のものの身体は、全て焼き尽くされてしまったのだろう。
これから本格的な捜査が始まるだろうし、連続放火魔も捕まるかもしれないが、どちらにしてもケムンに嫌疑がかかる恐れはなさそうだ。
“ついでに”行方不明のホームレス達の捜索もそのまま引き継がれるみたいだが、この町ではよくある酔っぱらいの起こす傷害事件の方が、本腰を据えそうな雰囲気である。
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警察書からホテルに帰り、一応平穏が訪れた。
一人だけになったリーダーのカンさんが静かに言った。
「さあ、もう晩いな。みんな寝るか」
三人は黙って頷き、それぞれの城へと帰って行く。
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ケムンはハウスに戻るとどかと胡坐をかき、右手をロングコートのポケットに突っ込み、何かを取り出した。
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