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「好きです!
付き合ってください!」
目の前にいる女の子が
そう言って頭を下げる。
…この子、なんて子だっけ。
同じクラスじゃないことは
確か、だと思う。
さらさらした髪が風に揺れて
なんとなく
綺麗だな、と思った。
ぼーっとしている間に
女の子は顔を上げていて、
不安そうに俺を見ていた。
「えっと、あの…」
ああ、他の女とおんなじだ。
不安そうな顔してるくせに、
バサバサの睫毛に飾られた
真っ黒な作り物の目の奥は
期待と自信に満ちてる。
こういう女、嫌だ。
俺は困ったように笑って
彼女を見つめて言う。
「ありがとう」
彼女のぷるぷるしてる薄い唇が
孤を描いていた。
「でもごめん。
悪いんだけど俺、
恋愛とかわからないから」
そう言うと、彼女の目が
信じられないと言いたそうに
大きく見開かれる。
「え、でも、待ってよ。
早見くんってあたしのこと
あんまり知らないでしょ?
そんなすぐに
答え出さなくたって…」
振られると思わなかったのか、
彼女はひどく動揺している。
俺はその様子を気にも止めず
笑顔のまま言い放った。
「君だって俺のこと
よく知らないでしょ?
じゃあ教えてよ。
君は俺のどこが良いの?」
その瞬間、彼女は
氷のようにぴたりと固まった。
一切言葉を発しない彼女に、
俺は追い打ちをかける。
「悪いけど俺、
君みたいな子無理なんだ。
化粧で自分の素顔隠して
媚び売ってるみたいな子。
ただ彼氏が欲しいだけなら
他あたってくれる?」
彼女は悔しそうに唇を噛みしめ
走り去っていった。
「…あー、めんどくさ」
俺は独り言を呟き、
教室へ戻った。
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