『新谷美月』

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 その時、その人は傍目に見てわかるほどガチガチに緊張していた。  あ、いや。『その人』なんて言い方じゃ失礼だ。小島俊彦君。他のクラスの男子生徒で、前に友人と見物に行ったサッカー部の練習試合でグラウンドを走り回っていた姿も知っている。  この夏の間も部活に励んでいた彼の肌は日に灼かれて黒ずんでいた。  そのひたむきさは、1年の序盤でバスケ部を早々に辞めてしまった私には眩しいばかりだ。スポーツは漫画に憧れて始めるものじゃないなと学んだ2カ月でした。  それはさておいて、どうして大して興味もないサッカーの試合なんかを観戦していたのかと言うと、その友人の彼氏――当時はまだ付き合ってなかったけど今ではすっかりラブラブだ――の応援に1人じゃ恥ずかしいからと無理やり付き合わされたから。  試合が終わって、その友人が彼氏と話をしていたとき、一緒に居たのが小島君だった。
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