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そういう他愛もない会話をしていたときだった。
猫が急に暴れだし、坩菜の手から逃げ出した。
「あっ!待って!」
坩菜は公園の外に逃げる猫を追いかける。
『ちょっ…坩菜!』
俺も坩菜を追いかける。
その時思い出した。
その公園のすぐ前は大通りになっていることを。
坩菜はきっとそんなこと頭にない。
『坩菜止まれ!轢かれる!』
坩菜には俺の声が聞こえなかったようだ。
「待ってー!」
『坩菜危ない!』
「え?」
もう遅かった。
坩菜は赤信号の横断歩道に飛び出した。
そしてトラックに轢かれた。
道路に血が広がる。
俺のとこにも血が飛んでくる。
坩菜の香りと血生臭さが混ざり合ってむせ返った。
顔をあげると向かい側の歩道にトラックが坩菜を引きずるのを見て笑う俺がいた。
坩菜が死ぬ!?
俺が二人!?
『嘘だろ!?こんなの全部!』
俺がこう叫ぶともう一人の俺…陽炎は笑いながら言った。
「嘘じゃないぞ。」
蝉の声が頭に響く。
目の前が真っ暗になった。
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