第一話

4/16
前へ
/24ページ
次へ
「行くのか?」  放課後。 ホームルームが終わってすぐ、さっきのホームルームで今日から部活の体験入部期間が始まると伝えられた後。  オレは幼稚園来の幼馴染、与那嶺真希(よなみねまき)に声をかける。  真希は机に座ったまま、オレの顔を確認すると机の中からメモ帳と筆箱だけを取り出して鞄に入れ、二つを引っ張り出した時につられて出てきた教科書とノートを机の中に押し込みながら言う。 「うん、行くよ。しげにぃ、居るかもしれないんでしょ?」  オレが少し迷ってから『あぁ』と答えると真希は立ち上がり、教室の出入り口からは教室を出る生徒たちの流れに逆らって男子生徒と、少し離れたここからでもはっきりとわかるくらいに顔立ちの整った女子生徒の二人が入ってくる。  男子生徒の方が井川(いかわ)、女子の方が空守(からかみ)だ。 「部活を見に行くんでしょう? どこに行くの?」  空守は真希の前に立つと真希に話しかけ、井川もオレや空守と同じように真希の前。  真希を囲むように立つ。  今、真希を中心に囲んでいる四人が小学校の高学年からのメンツで、いつも卓を囲むメンツだ。 「やっぱり、麻雀部に行くよ。私、それしかできないしね」  何とか教科書とノートを机の中に押し込み、そう言いながら立ち上がると机の上に鞄を置き、チャックを絞めて歩き出す。  真希に合わせるように空守も歩きだして二人で何かを話を始め、オレも二人の後についていこうとすると、後ろから井川に声をかけられる。 「なぁ、俺、嫌われてんのかな?」 「誰に?」  オレが返したところで井川も俺の少し後ろを歩きだす。 「空守にだよ。俺がいくら話しかけてもまともに会話になりゃしない」 「いや、そんなこと無いと思うぞ?」  教室を出てすぐ脇にある階段を下り、二階に出て階段正面の渡り廊下を通って部室棟に向かう。  この学校はかなり特殊な高校で、閉校した学校の校舎を買い取ると今から四年も前に開校させ、プロと名前の付くようなものだったらスポーツでも学術でも専門学校に近いレベルでの活動ができるように設備を整え、それを売りに生徒を集めている様な所だ。  設備に掛けている資金のせいかこの学校自体が部活動を中心に回っているような物で、部活動の内容も『高校の学園生活の一部』と言うよりは『専門的な学習の準備期間』と言う方が近いような内容になっている。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加