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その甲斐あってかこんな田舎でも毎年募集人数の倍近くの人数がこの学校の入試を受けるらしい。
部活動もスポンサーをつけることで普通ならこの学校の学費、公立高校並みの学費で、専門学校にも見劣りしない講師を連れてきている。
「空守はお前を嫌ってるわけじゃなくて、真希と仲が良いんだよ。別に特段優れてる能力がある訳でもないのに、一緒に行動することを避けないって事は、それだけ気を許してるって事だ。あいつ、他の奴に話しかけられても答えないどころか無視して何処かに逃げちまうからな」
文学部では一線で活躍していた、もしくは活躍している小説家だったり、野球部ならコーチや監督経験のある元プロ選手と言った具合で、スポンサーは文芸部に対してなら出版社、野球部に対してならプロ球団のスポンサー会社になる。
だが専門学校だって会社と契約した上で何百万と言う金を持って行くんだから、おかしなような気もする。
部室棟。
授業を受ける校舎よりも更に年季の入った校舎に渡り、今度は階段を昇り始める。
「そうか? お前だってよく空守と話してるじゃねーか」
「まぁ、オレはよく真希と一緒に居るからな。少しくらいは話すようにもなるだろ」
五階。屋上まで上りきり、階段室を出て屋上に出る。
屋上の端には教室二つ分くらいの大きさのプレハブ小屋があった。
階段室の出入り口から見てちょうど正面にある出入り口の脇には『麻雀部』と表札が下げられていて、真希はオレの後ろに回り込み、顔を真っ赤にしながら背中を押す。
「伸行――」
「ん? あぁ」
真希に押されながら出入り口の前に立ち、戸の取っ手に手をつける。
「しつれーしまーす」
ガラガラと音を立てながら戸を開け、一応の挨拶をしながらパレハブ小屋、部室の中に入る。
「あ――やっぱり、来ちまったか……」
部室の中は日を差し込んできているが、窓が小さいからか薄暗く、広さは外から見たときよりも一回りほど小さく見える。
しかし中の設備はキッチンやテレビ、ソファーなどもあって、数人ならここで生活することも難しくは無さそうだ。
部室の奥。ちょうど中央あたりに雀卓が二つ並べて置いてあって、二つ目の雀卓の少し奥にあるソファーの陰から人影が現れる。
「久しぶりだな、伸行」
そう言いながらソファーの陰に居た人影はオレの方に歩いてくる。
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