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真っ黒な髪の色はまるで元々そうだったかのように綺麗に抜けて真っ白に。
背格好はオレとほぼ同じだが、顔は異様なほどに大人びていて、髪も含めてオレが最後に見た物とは一切と言っていいほどに一致しない。
しかし、
「よく見つけられたな。真希ちゃんも一緒か?」
この男は間違いなく、オレの兄。東亜茂(とうあしげる)だ。
写真や映像で見たときは半ば信じられなかったが、今はただ何の根拠もなく、言いきることができる。
茂はオレの後ろ。オレの肩越しに出入り口から屋上を覗き込み、言う。
「ほう、こりゃ豪華だな。去年の中学女子決勝の半分がここに居るのか……」
中学女子決勝。おそらく去年の麻雀の大会の事を言っているのだろう。
ここ数年、テレビ局主催で幾つもの麻雀の大会が開かれていて、去年は中学生の女子を対象とした物で真希と空守が決勝まで進んで、空守はそれで優勝までしている。
少し間をおくと、俺のすぐ後ろで隠れるようにまるで礼でもするように頭を下げている真希を見下ろし、話しかける。
「久しぶりだな、真希ちゃん」
そう言いながら真希の肩に手を伸ばし、
「打たないか? あと五分もしない内にもう一人面子は来るし、せっかく道具も一通りそろってるんだから」
ぽんと真希の肩を叩くと今度は空守の方に目線を向ける。
「中学生チャンプ。ぜひ、お相手願いたいね。つい此間まで中坊だったとは言え、将来性くらいは確かめておきたいからな」
それを聞くと空守は一瞬茂を睨みつけ、今度は満面の笑みを作って言う。
「えぇ、ぜひお願いします。何年も前に天才とか、神童とか言われて、調子に乗っていた人に負ける気はありませんが」
茂は『ハッハッハッ』と笑いながら部室の奥に入って行き、『威勢が良いな、期待させてもらうぞ?』とからかうように言い、電気をつける。
「えぇ。してください。しかし、恥をかいても知りませんよ?」
空守は真希の隣に立ち、ボーっと茂の方を見ていた真希の手をつかむ。
「やろう、真希。私はあんなふうにバカにされたままでは気が済まない」
真希を引いて手前の雀卓のところまで行く。
茂は雀卓のコンセントをつなぎ、正常に動く事を確認すると端に寄せてあった牌をすべて穴に落とし、真ん中。
サイコロの入る丸いスペースを囲むようにある四角いプラスチック板のスイッチを押し、四方に山を出す。
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