開死

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 高層マンション。20階建ての屋上から一思いに飛び降りて、一瞬全てから解放されて直後、頭をアスファルトにぶつけて即死した。  しかしこうして自分の死んだ時、というのを振り返ることが出来る時点でもう異様だった。明らかにあの時考える脳は粉砕された筈なのに。  ただ願ったのだ。  もしも叶うのなら、9年前辺りからやり直したいんだ、と。  死後の世界というのは誰にも分からなくて、だけど魂や意志という何かがある以上、つまりは消えた先というのがあって然りだと僕は思っていた。幽霊だって怪談だってきっとそう言った考えの延長線上にある筈なんだから。  消えた先、というのは多分生まれ変わりとかだと思ってる。人は死んだら生まれ変わる。これは僕がそうあって欲しいという願望だった。  だけどそれを超えた先の願いがある。  出来れば生まれ変わるなら次も僕がいい。  結局破綻だらけの破滅だらけの自己中心的な、世界にとって史上最大に迷惑な存在だったけど、きっとあの時選択を間違えなければ僕だってここまで壊れなかったんだから。  だから僕は願って、死んだ。  出来ることなら、九年前の春にでも戻ってやり直したいと、そう思いながら。
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