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「わっしょぉい!」
当初の予想は大きく裏切られ、じい様は次から次へと魚たちを釣りあげていきました。
一匹一匹持っていたんじゃ、とても持ち切れないので、じい様は魚たちの尻尾に糸をくくりつけ、まとめて持ち上げることにしました。
「さかな、さかな、さかな~。さかなを食べると~」
元気に唄まで歌っちゃいながら、山道を進んでいくじい様。
もう今日だけで、何km歩いたでしょうか。
都会育ちの若者だったら、とうにへばってもおかしくない距離を、じい様は汗一つ垂らさず黙々と進んでいるのです。
いやはや、おみそれ致しました。
そんな年齢詐称を疑わせるじい様は、ふと何かを見つけました。
それは、常人には捉えることのできないほど離れたところの、大空を舞う一羽の鳥でした。
何やら動きがおかしいみたいです。
「ありゃ、羽根に怪我しとるじゃな…。あのままじゃ墜落しちまうか…」
ふらふらとあっちこっちバランスがとれていないその鳥は、じい様の読み通り、次第に下降していきました。
「間に合っちょくれよ…!」
慌てて駆け出すじい様。
どうやら落ちてくる鳥を、その手で受け止めるようです。
鳥は空気を読んだかのように、ゆっくりとじい様に合わせて高度を落としていきます。
「ま…間に合えー!」
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