記憶を無くした猫

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「おい、どうした。顔色が悪いが―――」 異変を感じ、ススキが問う。 白猫は痛みを押し込めた。 「だいじょうぶです」 笑う様に努め、なるべく平静を装った。 「そういえば、先程村と仰っていましたが、どんな名前の村なんですか?」 変調を来している事を隠し切れていないのだろう。 茫々とした眉毛が寄り、ススキは訝しげな顔をしている。 「村の名前が気になるのか?ナシナ村というが………」 それを聞いて、白猫の視線が下に落ちる。 記憶に無い。聞いたことの無い村の名前だった。 頭痛が増す。 ―――いや、そもそもわたしは………。 「じいさん」 ミカヅキが、カルテから顔を上げてススキを呼ぶ。 「空欄があるが、ここは書かなくていいのか?」 「なんだって?」 差し出されたカルテを取り上げ、ススキの目が左右に動く。
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