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再び波の音だけが、辺りを包む。
潮風で黒ずんだコートが踊り、白猫に金色の視線が注がれる。
白猫の足に水しぶきがかかり、渇き始めたワカメに潤いが戻る。
「アンタ、大丈夫かい?」
ゆっくりとした口調だったが、意識しているしていないに関わらず、そこにはナイフの様な研ぎ澄まされた鋭さがあった。
答える者は誰もいない。
海が騒めき、何処かでカモメとは違う鳥の鳴き声が聞こえるだけ。
白猫の爪先が、ピクリと動いた。
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