3人が本棚に入れています
本棚に追加
「おう、起きたか」
しゃがれた声がして、顔をその方向に向けた。
電気がついていない為か、室内は窓の周り以外そこまで明るくはない。
薄汚れた白い壁。そこに古ぼけた時計が一つ。
幾つものベッドや棚が置かれ、棚からは先程より鼻を鈍らせてくれている臭いが漂っていた。
部屋の中でただ一つ置かれている机の傍から、白衣を来た灰色の老猫が、椅子をキシキシ鳴らして白猫を見ていた。
持っていたカルテに数行走り書き、それを机に置くと立ち上がって近づいてくる。
「見た感じ、正常じゃな。気分は悪くないか?」
垢が目立つ爪で顎を掻きながら、丸まった背を更に丸め、目線を合わせる。
瞬きを数回繰り返し、白猫は口を開いた。
「………あの、ここは?」
喉から出たのは、凜とした男性の声だった。
最初のコメントを投稿しよう!