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「しがない病院で、村唯一の医療機関だ」
「………病…院」
「で、儂は唯一の医者じゃ。名はススキという」
ちぢれ毛の間から、犬歯を出してニヤリと笑う。そして、白猫の手首を持つと、脈を取り始めた。
「お前さんは、砂浜で倒れ取ったらしい。病院に着いた時には、随分と衰弱しておった」
「よし」と頷き、ポケットから紙とペンを取り出して、素早く何かを書き付ける。
「脈が若干速いな。傷はかすり傷程度、と。なにか、吐き気なんかはあるか?」
「………少し、頭に痛みが。あの、私はどうやってここに?」
「ああ。ミカヅキがお前さんを見つけて、ここに連れて来たんじゃ」
「ミカヅキ?」
すると、ススキの背後から重量のある物が床に落ちる音がした。
「じいさん、今週分の荷物だ」
その後に続く、冷たい声。
ススキは振り返ると、「おお」と返事をした。
「ご苦労さん。そうじゃ、ミカヅキ。お前さんが運んできた奴が目を覚ましたぞ」
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