プロローグ

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 今からおよそ100年前、人間はふとした拍子に精霊という存在を発見した。 最初に発見された精霊は地味だと思うかもしれないが、羽ペンの精霊。  なんの変哲も無い一般人のお婆さんが昔からずっと大切に使ってきた羽ペンに宿った精霊。 お婆さんが1人寂しそうに、しているのを見て羽ペンの精霊は彼女にこっそりと一枚の手紙を机の上で書き、彼女を励ましたそうだ。 彼女は朝その手紙を見つけた時、突然机に置かれていた手紙に驚いたそうだが、内容が自分を励ますような元気を出して欲しいと感じる物だったので害は無いと判断したそうだ。 彼女は誰とも知らぬ励ましの手紙を書いてくれた人にお礼の手紙を書き寝ると、次の日の朝には返事の手紙が書かれていた。 そうしてお婆さんと羽ペンの精霊がやり取りした手紙から、精霊という存在が確認されたのだ。  だが、当初は作り話だとか、そういった精霊の存在を否定する意見が大半以上を占めた。 今では普通に姿を現してくれており、街を普通に歩く精霊を見ているからこそ俺達は信じられるが、目に見えず滅多に何も人間に干渉しなかった当時の状況を考えれば信じられないという精霊を否定する考え方が一般的だったのは仕方が無いことだろう。 そんな感じで始まった人間と精霊との交流は羽ペンの精霊が俺達人間の前に姿を現してくれたことから、急速に加速し始めた。 今まで否定的だった人間達も、羽ペンの精霊を見てなんともいえなくなる者。またこれは幻覚だ、なんだとの信じない者に分かれた。 一応、当時その羽ペンの精霊を見た者がこう書いている。 『私は信じられなかった。正直な所目を疑った。 白かっただろう羽の部分は長い間使われていたからだろう黒ずんでいるが、それ以外は綺麗だった。 そんな羽ペンが突如として、ふわりと宙へと浮かび、黒ずんだ羽の所に可愛らしい目を2つ。 そして細い手足をまるで人間のように生やして、私達の方へと手を振っているのだから』  これを読む限りでもどれだけ驚いたかが分かるが、今ではそんな人間を驚愕させた羽ペンの精霊達は、普通に学校や家、様々な職場など羽ペンを使うところならば存在し俺達の生活を助けてくれている。 勿論無料ではなく給料を取る形でだが。
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