切実に休みが欲しい

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「立ってるだけで筋肉痛とは、若いのに情けないな」 「1日合計睡眠時間が12時間近くを越すお前に言われたくないな」  彼の皮肉に対して、俺も皮肉を返す。 この目覚まし時計タムイとの契約料は安い。なんと驚きの月に林檎2個という安さ。そりゃ、12時間も寝ていてたまに起こして欲しい時間にすら寝ているのだから当たり前か。 ちなみに、まじめな目覚まし時計と契約しようと思うともっとお金がかかってしまう。時計屋さんに言って、一番安く契約できる目覚まし時計を聞いたところこのタムイだったのだ。 何せまだ新人で安月給でと、とことんお金が無いのだから仕方が無い。だけどもタムイの精霊としての個性も好きだし、良い話相手にも成ってくれるから文句は無いかな。 「あ~、俺の体見たら分かると思うけどちょっと寝坊しちゃった」 「ん?」  テヘとばかりに自分の頭についている金を叩くタムイに対して、寝ぼけ眼もいい所の目で彼の体をよく見る。 ちなみに彼の目は彼の体に書かれている数字の、10の所に1つと2の所に1つ。そして口は5~7の所にかけて細長い線のような口が弧を描くようにある。  このようになんともコミカルな奴である。こいつの体の長い針と短い針がさしている時間を見て、寝ぼけていた頭が急に冴え始める。 「7時30分だと?」  一応仕事は8時開始だから時間があるのでは?と思うかもしれないが、なんだかんだ仕事の下準備や通勤時間を考えると7時30分には家を出ていなければいけない時間なのだ。 「タムイ!やってくれたな」 「まぁ30分くらい許せ」 「許せないわ!その30分がどれだけ大事だか知ってるだろ!?」  俺は頭の中で今日の朝飯が抜きになったことに少しばかりタムイを恨みながら、茶色の長ズボンと白いワイシャツに赤いネクタイという春の正装に着替えて、自分の部屋から飛び出す。 目覚まし時計の精霊との契約はケチらずに、少々高くてもまじめな奴にするべきだろうか?
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