太陽と月、水と油

2/11
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
 昼休みが終わる5分前。  私は届く範囲の黒板を  丁寧に拭いたあと、背伸びして  上まで綺麗にしようとする。  身長は155cmで  止まってしまったらしく、  遥かに高い位置には  どうしても届かない。  だけどもうすぐだ。  きっとまた彼はやって来る。  私は胸をドキドキさせながら  背伸びをする。  「う、わっ」  突然バランスを崩して  後ろに倒れそうになる。  すると、後ろから両肩を支える  温かい手の感触と共に、  私の手から黒板消しが  奪い取られた。  身長の高い彼は、  私には届かない高い所を  いとも簡単に拭いていく。  見上げた横顔がすごく綺麗で、  思わず見とれた。  「あ、えっと、ありがとう。   手伝ってくれて」  いつものようにお礼を言うと、  彼はそっと微笑んで  私の髪や肩に付いている  チョークの粉を手で払う。  「永瀬ほどには   綺麗にできねーけど」  低すぎず、高すぎずの美声。  何より名前を呼ばれたことが  たまらなく嬉しい。  お友達のところへ戻っていく  彼の背中を見つめながら、  私も席に戻る。  早見くん。  早見、朔夜くん。  そんな綺麗な名前を持つ彼が  私の好きなひとだ。 _
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!