太陽と月、水と油

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 中学時代、彼と私は偶然  委員会が同じで  何回か話した記憶がある。  私はいつも委員会で  ミスばかりしていた。  だからみんなには笑われるし  先生にはこっぴどく怒られる。  そんなある日のことだった。  私は担当の先生に  3階から1階の職員室まで  資料を運ぶように言われた。  大きな段ボールに入った  その資料は相当な重さで、  私は1歩踏み出すたびに  ふらふらとしてしまう。  すれ違うひとたちはみんな  興味のなさそうな目で  私を見て素通りしていく。  長い時間をかけて、  ようやく1階にたどり着いた。  腕は悲鳴を上げているが、  職員室までもう少し。  引き受けた仕事を  途中で投げ出すなんて、  そんなことはできない。  「永瀬っ!!!」  突然怒鳴られた私は、  驚いて転んでしまった。  それと同時に段ボールから  たくさんの紙が飛び出す。  「ただ運ぶだけなのにお前は   どれだけ時間をかけるんだ!   さっさと拾え!」  顔を真っ赤にして怒る  担当の先生が恐くて、  私はすぐにしゃがみ込んで  散らばった紙を拾い集める。  「早くしろっ!!」  「ご、ごめんなさ…」  じわりと滲んだ視界に  突然入ってきたのは、  私のものじゃない、大きな手。  素早く紙を拾い集め、  私が持っていた分も奪い取って  段ボールにしまう。  私は何にも言えなくて、  ただ彼を見つめていた。  「先生、はい。   永瀬はここまで頑張って   持ってきたんだから   あとはご自分でどうぞ」  薄く笑って先生に  段ボールを差し出す彼。  「なっ、わ…私は職員室まで   運べと言ったんだ!」  先生はひどく動揺していて、  段ボールを持つのを  頑なに拒んだ。  そんな先生を彼は鼻で笑い、  殺気に満ちた目で見る。  「てめーが持てねーもんを   女子に持たせんじゃねーよ。   永瀬はこういう仕事が   苦手なこと知ってんだろ?   生徒をてめーの   ストレス発散に使うな」 _
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