workout

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せせこましい玄関にそうっと行き、勢いよく扉を開ける。 「文句が有んのならちょくせっ…ぅわっぷ!」 言いたかった台詞を途中で何か霧の様な物で遮られた。咄嗟にしゃがみ込んだ瞬間一瞬見えた黒い服の男の手にあるスプレーの缶。何かを顔に吹き付けられたのだと理解した時にはもう遅く、反撃をしようにも視界が涙で一杯になり標的が見えなくなっていた。 催涙スプレーか。卑怯過ぎるだろ。学生の時はこの辺りでまあまあ名前が知れている程強かった(と自負している)ので自分で言うのも何だが、喧嘩には自信があった。相手が余程でなければナイフや鉄パイプ程度の武器を持っていたって丸腰で押さえ込めると思っていたのだ。だから今も何も持たずにドアを開けた。 しかしまさかこんな現代化学の先端をゆく防犯グッズが自分に牙をむくとは予想だにしていなかった。 ほんと、笑っちゃうよな 防犯グッズが犯罪に使われんだぜ? ふざけてるよ、全く。 じゃなくて! 下らない事を考えている場合ではない。 どうにかしないと… 次から次へと零れる涙が今の状況を把握する為の情報を阻む。
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