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受話器の前で正座する事二時間。
ただひたすらに先輩からの電話を待つ僕は、たぶん僕の十四年の歴史の中で、一番純粋な気持ちでいると思う。
先輩は「考えさせて」と言った。後は審判が下されるのを待つのみだ。
こういう時、普通はもっとおどおどしたり、びくびくしたり、マッチ棒で家を建ててみたり、もっと情緒不安定になるものかと思っていたが、実際告白が終わってみると、鬼がでるか蛇がでるか、楽しみな気持ちの方が強いような気がする。
……満足だ。たとえ振られる事になったとしても、僕の二年間の思いのたけを伝える事ができた。それでいい。
なんだかんだで最悪の事態を想定して保険をかけている僕は、やはり情緒不安定なんだろう。
そう思って部屋の隅に置いている大量のマッチ箱に手をかけた時、不意をつくようにして電話のベルがなった。
その音に呼応するようにして心臓が高鳴る。
……覚悟を決めろ。意表をつくのは先輩の十八番だ。僕は受話器を取った。
「……もしもし?」
「……もしもし、私の可愛い後輩クンですか?」
先輩の声は若干寂しそうに聞こえた。先程から頭の中をループしている最悪の事態がフラッシュバックしたが、僕が思っている最悪の事態と、先輩が口にした最悪の事態は、あらゆる意味で食い違っていた。
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