I do.

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バタン 扉を開け放つ。 みんなが一斉に振り返りざわつき出した。 ステンドグラスからこぼれる光に包まれた二人は、今まさに神のもとで誓いをたてようとしているところだった。 生涯、愛することを誓いますか? I do. ってね。 冗談じゃない。 大きく息を吐いて吸う。 俺は、神父もビビる大声でお決まりのセリフを叫んだ。 再び静まり返る聖堂 誰かがピュウと口笛を鳴らしている。 あいつはどんな顔してるだろう。 まだ整わない息を吐きながら、 目を凝らす。 視線の先には白い燕尾に身を包んだあいつは、真っ赤な顔して、死ぬほどびっくりしたように目ぇ見開いてる。 そして、泣きそうに眉をハの字に 下げていた。 ばか。 情けない顔してんじゃねーよ。 俺は生まれて初めてのバージンロードを擦り減った靴で一歩一歩踏み進んだ。 幸せ 悲しみ 喜び 怒り 感謝 そして 誓い 生まれ落ちて、これまでの。 出逢ってから、この先の。 想いが詰まった道を 一歩づつ一歩づつ。 ありがとう ありがとう そして ごめんなさい 俺の 最初で最後のバージンロードだ。 2人の前に来て、俺は花嫁の方へ向くと頭を下げた。 「花婿を、いや、こいつは俺が貰っていきます」 そして振り返る。 呆然と立ち尽くす花婿の 腕を掴んで 「いくぞ」 走り出した。 何もかもを 捨てて、奪って、守る覚悟を 俺は今、手に入れる。 はぁ、はぁ、はぁ、 また走ってる、俺。 今度は花婿連れて 真冬の街を駆け抜ける。 もう何も怖くない。 周りの目なんか気にしないで 俺は叫んだ。 「俺と、ずっと一緒に居てよ!!」 けど、後ろからはズズッて鼻水すする音しか聞こえない。 「この先もずっとずっと、一緒だって誓え!!」 すると、喧騒に消されそうな 「…I do.」 涙混じりの誓いの言葉が 俺の耳に確かに届いた。 fin?
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