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   俊平は、西日を浴びて黄金色に輝く公園に一人残される  去り際に彼が言った言葉  『雑草のように目立たず、虻のように執念深く、コウモリのように耳をすませば自ずと道は開けるってもんだ』  彼の言うように上手く行くのならこの仕事にも魅力を感じるのだろうが、雑草や虻には簡単になれそうもない  美優はその後、2回ベランダに出た。1回目には洗濯物を取り入れ、2回目には雨戸を閉めた。それからしばらくして居間に明かりが点る。俊平はバッグから握り飯を取り出して頬張った  西の空に金星が輝き始める  そのとき、玄関からみどりが飛び出し、少し走ると交差点の手前でふりかえった。そして、小さな腕を頭の上に高くかかげ左右に振った  「さよなら。またあしたね」  玄関先では、花音が細い腕を挙げている  やがてみどりの姿が見えなくなる。美優の家の扉はピシャリと閉められた  しばらくして俊平のスマホが震動する。みどりからだ .
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