始まりの雪

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「大丈夫?」 白い街灯に白いビル、白い橋に白い土。 町はすべてが白かった。 かぶっている雪こそ少なかったが、町はすべて白く染め上げられていて、そういう意味では白銀の世界ともいえそうだった。 見たところこの白さは、白く塗られているというより、色が抜けているという感じか。 見るもの、見えるもののすべてが真っ白だった。 普通の雪をかぶっただけでこんなに白くなっていたら心地いいほどのものなのだろうが、残念ながら降ってきたのは普通の雪じゃないため、純粋にこの状況は気味が悪いと感じられてしまう。 言ってみればこの気味の悪い世界は、死の世界。 すべてに生気という色がなくなった、悲哀の世界。 命という言葉は、存在の気配すら見せなかった。 壁にもたれていてようやく目が覚めてきた俺の目に、少女が一人うつる。 うっかり授業中に寝てしまっていたところを友達にいたずら半分で起こされたような感じでぼけっとしていると、目の前のその少女は左手に持っていた傘を置き、俺の倒れているほうへと歩み寄ってきた。
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