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「…………」
ボブカットくらいに短い髪、その短いのに綺麗だと言えてしまう髪に包まれた異常なほど白い顔。
女子高校生にしては小さい気がする背丈と、地平線に沈む直前の太陽を映す海のように輝く瞳。
制服に身を包んだその姿は、白い世界ではかなりの存在感を放っていた。
確か……白神有希(しらがみゆき)、とかいったか。高校三年間ずっとクラスメイトの奴だ。
といっても彼女のことは、隣の席だから少し話す、くらいの交流しかしていなくて、よく知らないのだが。
「とびの……、飛火野結城(とびのゆうき)君……?」
立てる? と白神は手を貸してきたが、その手は借りず一人で立ち上がった。
よし、体のどこも雪でやられていない、とひとまず安心。
確認後、なるべく目を凝らして見える限りの世界を見渡したが、やはりどこも真っ白になっていた。
雪に振り残しはなかったらしい。
「俺たち……だけなのか。……生き残ったのは」
まず初めにした白神に対する問いは、そんな感じの文字の配列が作った文章。
状況的に当たり前の問いでこそあるが、その答えもまた当たり前なものだった。
「……うん」
悲哀の世界によく似合った、悲哀に満ちた顔だった。
ほかの奴に言わせればそれは、皮肉と言いそうなものでもある。
周囲には、白い砂があった。
仲間たちが残していった、彼らが生きていたという唯一の証。
道端に転がる石も、ついこの前まで使っていたはずの建物も、足元にあふれている砂でさえも。
何一つ、生きていなかった。
何一つ、色がなかった。
すべてのものが、白かった。
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