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ウォレスとマリアが語り合っていた頃、タイタニック号が翌日出航する町サウサンプトンでは、タイタニック号の造船会社ハーランド&ウルフ社の建造責任者トーマス・アンドリュース氏らが出航記念の夕食会を開いていた。
ホワイトスターライン社の社長J.ブルース・イズメイ氏、タイタニック号の船長E.J.スミス氏の姿もある。
「では、タイタニックに祝福あれ! 乾杯!」
アンドリュース氏が乾杯の合図をし、皆がワイングラスを高く上げた。
「乾杯!」
「スミス船長、今度の航海で引退するというのは本当なのかい?」
アンドリュース氏が白いあごひげが印象的なスミス船長に聞いた。
「はい。しかし、このような立派な船で最後を飾ることが出きるなんて、光栄ですよ。イズメイ社長には感謝してます」
「いや、そんな。私だってあなたのようなすばらしい船長に、この船の最初を飾っていただいて、うれしいかぎりですよ」
「はっはっはっは」
終始和やかなムードで進んだ夕食会に、3人の笑い声が響いた。
「では、明日も早いことですし、この辺でお開きにしませんか」
しばらく飲んだ後、スミス船長の提案で、夕食会が閉じられた。
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