1912年4月10日

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一等船客が乗り込んできた。 ウォレス率いる楽団はエントランスで、演奏を始めた。 響きわたるバイオリン。そして調和。チェロやピアノがそれを引き立てる。 乗船してくる一等船客を見るのもウォレスにとっては楽しかった。 羽付き帽子をかぶり、いかにも高そうなカバンを召使いにもたせて乗船するご婦人方。 黒のスーツに身を包み、軽快な身なりで乗船する紳士たち。 ウォレスは上流階級に憧れていたのだ。 (いつかマリアを連れて、こんな船のスイートルームに乗るんだ) ウォレスは夢を頭に描いた。
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