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(きっとこの船がサウサンプトンの港の祝福を受ける頃には、僕の名前も知られて……)
ウォレスはバイオリンを持ち、一緒にワルツを演奏し始めた。
(そして、いろんなホールで僕のバイオリンを聞かせる! もしかしたら、ニューヨークのカーネギーホールでもできるかもしれない)
ウォレスはバイオリンを弾きながらも、別の世界を夢見ていた。
(そうなったらこの船の一等でニューヨークに渡るんだ。マリアと一緒に……)
そのようにウォレスが考えているうちに、一等船客で大食堂が埋まっていた。
きらびやかな雰囲気が自然と流れている。
きれいな昼用ドレスを身にまとった女性たち。
モーニングなどの昼用正装の殿方。
そして、スミス船長が前の演台に行き、話し始めた。
「今日、この船、タイタニック号の処女航海にご同行いただき皆様には感謝しております。まだ、シェルブールやアイルランドのクイーンズタウンから乗られる方も居られますが、ここで一度この航海に祝福をおくりましょう!」
そういうとスミス船長はシャンパングラスを高くあげ、乾杯の音頭をとった。
ウォレスたち、楽団もそれにあわせて祝祭曲を演奏し始めた。
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