黒い羊

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 だけど、1人で居るのに耐えられなかった俺は、さらに嘘を吐いた。学校での事だ。  ――あの時チクったのは、全て嘘でした。本当は、悪いのは全部僕でした。皆は悪くないんです。皆は僕を止めていたのに、僕が無理矢理悪い事をしたんです。  泣きながら、先生に頭を下げた。そしたら先生は信じ込んで、数時間にも渡る説教をしてきた。その時に、嘘泣きが出来る事に優越感を感じた。先生を騙せた事に、満足感もあった。  でもそれ以上に、胸が痛かった。ひどい風邪を引いたみたいに、電気ショックを喰らったんじゃないかと思ってしまうような痺れを感じた。  必要な事だったから、仕方がないんだ。そう自分に言い聞かせて、なんとか我慢した。  俺は1人が嫌だから、皆と居るためには、こうしなければいけなかったんだ。そう、だからこれは、悪い事じゃない。良い事なんだ。俺1人が怒られる事で、皆が怒られないで済む。そして、皆がまた、俺と仲良くしてくれる。  そうやって、自分にも嘘を吐いた。  考えた通り、1度疎外された俺も元の人間関係に戻る事が出来た。やっぱり、嘘は必要な事なんじゃないか。素直に生きたって、誰かが傷つく、だけじゃないか。  ――気付いたら、嘘が癖になっていた。   ◇◆◇◆◇ 「なんでんな昔の事を思い出してんだ……」  肩を落として呟いたのは、他でも無い自分批判から来る脱力感のせいだ。  自分批判に意味は無い、だなんて、俺だって重々承知している。でも、俺はこういう性格だから仕方ないんだ。  落とした肩を怠いながらも起こし直して、今度は力無く空を見上げる。晴天。馬鹿みたいに寒い、中学3年の冬。ニュースとかではこれで今年は暖冬だっていうんだから、世の中おかしい。  というか、これ以上寒くなったら学校での勉強に集中出来ない。人間性に劣る俺は、高校進学するために勉強は必須なんだ。だから本当は、悩んでる暇なんてないんだけどなぁ……。
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