屋上からの来客者

2/9
前へ
/9ページ
次へ
「逢紀ー何かすることないか?」  気だるい声が部室に響く。  すでにゴールデンウィークの色々な会話が露と消えていった頃、俺は五月病と思われる症状がでていた。 「そうだねー、純一が何かしてくれたら考えるよ」  机に突っ伏している同級生部員、名倉逢紀が俺と同じ様に気だるい返事をする。 「何か、ね……」 「んでどうせなら科学部らしいことをしようぜ」 「あ、そうだ」  俺は部室の隅にある掃除ロッカーを開く。そしてその中からなぜか入っている金属バットを取り出す。 「どうするんだそれ?」 「これで逢紀の骨の硬さを調べよう」  バッターボックスに入ったかのように、逢紀の横でバットを構える。 「お、いいね。ついでに骨の治り方もわかる……って殺す気か!」  さすが逢紀、どんな状態でもノリツッコミをしてくれる。  本人曰く「たまにボケてくれる方がありがたい」とのことで、俺はこうやって逢紀をいじってよく楽しんでいる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加